9月30日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2017/09/29(金) 19:00
テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.377~横浜ジャズプロムナード】

  このコラムでも記したように、ぼく自身大いに楽しみにしていた、横浜赤レンガ倉庫街特設ステージで開催予定だった「ブルーノート・ジャズフェス」が、目玉のスティール・ダンの片割れ、ドナルド・フェイゲン急病の為来日中止、それに伴いフェス自体も取りやめになってしまった。残念だが致し方ない。そこで同じ横浜での街イベント、ジャズフェス「ジャズプロムナード」への期待がいやが上でも高まる。このフェス今年でなんと25回目、大小8
つほどのホールで昼から夜まで数多くのステージが組まれ、その他にもジャズクラブライブや屋外ライブなども数多い。参加ミュージシャン数、ボランティア数、観客数など、我が国屈指の規模を誇る一大ジャズ祭典のこのフェス、ぼくは初回から聞きに行っているがもう25年も経ってしまったと言うことでまさに光陰矢の如し、歳月の速さに驚かされる。観客のぼくでさえそうなのだから、初回から関係して来た横浜ジャズ協会の面々はもっとその想いが強いはずだろう。

 
さて我がジャズ番組では、このジャズフェスについて初回からほぼ毎回その内容を紹介して来ており、紹介役はフェスのプログラム・ディレクターでもある柴田浩一氏。彼は毎回このフェスに登場する、プレーヤーやシンガーを連れてスタジオに遊びに来てくれ、これまでにも向井滋春、板橋文夫、平賀マリカなど数多くのミュージシャンがゲスト登場している。今回彼が同行したのは中堅ピアニストの板垣光弘。地味だがしっかりとした技巧を誇る実力派。確か10年ほど前にデビュー作を出した時に番組に登場してくれた筈で、なんとそれ以来のこと。「久しぶりですね...」と挨拶を交わす。柴田氏はこのフェスの運営役の横浜ジャズ協会の中心人物で、国の内外を問わず多くの参加希望者が集まる中、それらを取捨選択し全体のプログラムを組み立てていく。仲々に難しい役割をもう25年に渡って続けており、それだけに多くのミュージシャンとの付き合いがある。特に彼のお気に入りは鬼才ピアニストの板橋文夫。毎回彼はフェスのトリとも言えるラストステージを関内大ホールで開催、自身のフルバンド、ピアノトリオ、ソロなどをミックスした形で延々2時間半ほどステージなのだが、今年もまたそのトリの役は彼だとのこと。

 
今回ゲスト登場の板垣氏は、柴田氏が以前からフェスに登場してもらいたいと思っていた実力派ピアニストとのことで、シンガーの伴奏役などではフェス登場はあったが、自身のトリオでの参加は初めてとのことで、板垣氏も張り切っている。彼のステージがあるのはNHK横浜放送局の玄関大広間。これは柴田氏が担当する、NHK横浜局FM放送のジャズ番組特別企画(4時間近い生放送)で、彼など4つのバンドが登場し、生演奏を披露すると言うもの。ぼくも2回ほどこのステージを見たが、観客も多くミュージシャンも生演奏でかなり張り切っており、スリリングな演奏を聞かせ、柴田氏のインタビューも途中に挟み込まれるなど、ラジオ放送としても面白いものであった。
 
このフェス今回もまたフィンランドやイタリアと言った欧州各国、そして本場アメリカからもデトロイト・ジャズフェス・スペシャルバンドなどが登場、国際色豊かなステージを繰り広げてくれる。またこれらと並ぶ目玉ステージは、先日亡くなったペギー葉山さんを偲んで、ブルーコーツ・ジャズオーケストラが、佐藤マサノリと堀江真美と言う男女のボーカリストをフューチャーして行う「ありがとう ペギーさん」。またモダントランペットの創始者、故ディジー・ガレスピー生誕100周年を記念し、高瀬龍一、類家心平、中村啓介など日本を代表する5人のトランぺッター達が、彼の業績を偲びペット競演を果たす異色ステージなどである。またこのフェスに共催するジャズクラブも全部で20数軒。それぞれでジャズステージが組まれる訳だが「今も昔もジャズは横浜!」とパンフレットにあるとおり、さすがジャズの街、横浜ならではである。
 
10月7日(土)8日(日)の2日間開催なので、是非秋の一日、港町そしてジャズの街でもある横浜に行ってみたらどうでしょうか...。

【今週の番組ゲスト:横濱ジャズプロムナード プロデューサーの柴田浩一さんとピアニストの板垣光弘さん

1078日に開催される「横濱ジャズプロムナード 2017」をご紹介頂きました
M1
It Don't Mean A Thing / ブルーコーツオーケストラ+佐藤マサノリ、堀江真美」
M2Waltz for Debby / 板垣光弘」
M3Shiny Stockings / 和田明」
M4The Blue Bird / 板垣光弘」



9月23日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2017/09/22(金) 19:00
テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.376~あのころ...】

 このジャズコラム、毎週続けるのが結構きつく感じる時もある。何をテーマにしたらいいか迷うと言うか思いつかないのだ。このコラム、純生ジャズテーマだけに絞ったものだったらば、もう今頃はギブアップしていたかも知れないが、ラグビー観戦、山行、ハードボイルドノベル&フィルム、そして温泉などなど、かなり好き勝手に書き綴っているからこそ、前のシリーズからして10数年間も続けて来れたのだ...とも言えそうである。そして今回だが、またまた何を書こうかと悩んでしまい、丁度ラグビーシーズンも始まり台風通過の中、神奈川県海老名市の相模川脇のグランドに、早稲田大ラグビー部のシーズン初戦(対日体大戦)をずぶぬれになりながら観戦したその模様でも...と思っていたら、担当のO部長から「弱い早稲田ラグビーに関するコラムなんて、しょうがないでしょう...」と言う当然なダメ出しを受け、又々振出しに戻ってしまった。

 
さてどうしたものか...と困っていた折、丁度お彼岸も近いので久しぶりに両親の墓参りに鎌倉の霊園にでも行こうかと言うことになり、その途中の車内でラジオを付けたらば(NHKFM)「アルフィーの...」と言う1時間番組。その回は高見沢と桜井の2人の担当日(メンバー3人のうち2人が担当)、貴方のお気に入りは...と言うテーマで、彼らの持ち歌へのリスナーからのお気に入りリクエスト、そして彼ら自身の想い出のナンバーなどを交え、2人のトークで綴る内容。リクエストで掛かる彼らのナンバーはどれもちっとも面白くないが、彼らの想い出のナンバーは「スリー・ドッグ・ナイト」の「ワン(ニルソンのヒット曲)」。彼らはアルフィーが学生時代(明治学院大)から憧れたロックコーラスユニットで、同じ3人組だけに参考にした所も多かったなどと、その思い出を語っている。アルフィーも今年で40周年らしく、そこで最初の数年は売れずに本当に大変だったとも2人は語っていたのだが、丁度その頃(70年代の終わりころ)ぼくは彼らといささか関わりを持っていたので、その頃の話が大変に懐かしくも感慨深かった。

 彼らは今や芸能界の一大勢力となった「田辺エージェンシー」の所属で、ここの社長は今や芸能界のドンとも謳われる、かつての「ザ・スパーダーズ」のリーダー&ドラマーの田辺昭知氏。その相方の川村龍夫氏との両輪で、丁度その頃は会社発展の一途。マチャアキこと堺正章、売れ始めたタモリこと森田一義が田辺AG所属で、この2人のおかげで、こことは何かと関係も深く、正月特番(3
時間だった)などはタモリ、研ナオコなど、ここの看板スターを毎年使って作っていた。そんな田辺所属のスター特番の添え物的扱いで登場したのがアルフィーであり、その一員の坂崎君とも仲の良かった、拓大を出たばかりの所ジョージなどであった。そしてこの特番には、まだ売れない頃の漫才コンビ「ツー・ビート」も顔を出し、タケちゃんも出し物を披露したりもしていた。この当時のマネージャーS氏は、「好い連中なんでぜひ使ってやってください...」とよく頼んで来たものだが、お笑いのセンスもある坂崎君以外は余り使い道が無いようにも思えた。
 その頃は本当に彼ら自身も迷っていた最中で、数年後にはあの「メリーアン」で大ブレークする訳だが、もう少しあの時何かで起用して恩を売っておけば...とも思うが、それも今となっては詮方なき事。そう言えばS氏は同時にあのシミケンこと清水健太郎も担当していたはずで
,その頃は清水くんにかかりきりになっていたと思われるが、あれから40年余り。清水君の方はその後、何回も逮捕されて今や消息不明。一方何をしても売れなかったアルフィーの方は、音楽界の大スターとして君臨、人生とは何とも分からないものである。高見沢・桜井両氏のラジオトークを聞きながら、あの頃のことが急に思い出されてしまい、色々と感慨にふけることもあった。
 そう言えば当時のラジオ短波(現ラジオNIKKEI)も、それまでの専門放送から方向転換、一般化路線推進などと言って好き勝手やっていた感もあり、ぼくなどはその先棒を担いでいた一人。大変面白くはあったが今となっては反省しきり...。

 
では最後に今週の1曲。山下洋輔トリオ(坂田明、小山祥太)の「砂山(童謡の砂山のジャズバージョン)」。当時のタモリやナオコによる正月特番の特別ゲストには山下一派(小山君は大学ジャズ研の後輩)に登場してもらい、番組最後を過激かつハチャメチャに締めるという方程式を、あの頃はいつも実施していた。そんなことが許された良き時代の想い出のジャズ・童謡ナンバーです。演奏も素晴らしいの一言。
 
なおこの「テイスト・オブ・ジャズ」は、9月30日放送分から11月4日まで、メイン放送が土曜日18時半から(この時間はお休み)、夜22時に移ります。悪しからず...。

【今週の番組ゲスト:今週はジャズトーク、音楽評論家の青木和富先生】「DISNEY音楽」についてお話いただきました。 
M1
TURKEY IN THE STRAW / 蒸気船ウイリー サントラより」
M2
FIREHOUSE STOMP / The Firehouse Five Plus Two
M3
A DREAM IS A WISH YOUR HEART MAKES(夢はひそかに) / シンデレラ サントラより」
M4
SOME DAY MY PRINCE WILL COME (いつか王子様が)/白雪姫 サントラより」
M5
SOME DAY MY PRINCE WILL COME (いつか王子様が)/ Miles Davis

9月16日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2017/09/15(金) 19:00
テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.375~ブルーノートJAZZフェス中止】

 先週の当番組では横浜の赤レンガ倉庫前特設ステージで、今月23日(土)と24日(日)の両日開催される予定の第3
回の「ブルーノートJAZZフェス」を特集、「ブルーノート東京」と姉妹店「コットン・クラブ」の広報担当、岡田、上神の両氏に遊びに来てもらい、色々とこのフェスについてお話を伺った。今回の目玉企画はあの2人組バンド「スティール・ダン」、その人気ロック&ジャズバンドの片割れ、知性派ミュージシャンで知られるドナルド・フェイゲン(名盤『ナイト・フライ』など自身のアルバムも好盤多い)が、自身のバンドを率いての初来日であった。このフェイゲン以外にも、注目の新世代テナーマン、カマシ・ワシントンや同じく新世代ボーカリスト、グレゴリー・ポッターなど多彩な顔触れ10数組が、メインステージとサブステージ、そして無料ステージと言う3つのステージに登場する予定で、今回初めて2日間にわたっての興行。広報陣も大張り切りで番組でフェスのPRに務めてくれていた。

 ところで恥ずかしながら、ぼくはまだこの横浜倉庫街で開催される「ブルーノート・フェス」を聴きに行ったことがない。これまでの2回は招待を受けながらも、仕事の関係等スケジュールの都合がつかず、心ならずも辞退していただけに、横浜行きを大いに楽しみにしていた。特にフェイゲン・バンド、更にそれ以上の期待は、上原ひろみと驚異のラテンハープ奏者、エクアドル出身のエドマール・カスタネ―ダと言う、話題騒然のニューユニット初のデュオライブ、この2つのステージに期待する所大だった。

 ブルーノート広報は、すぐにフェス招待状送りますから...ということだったが、フェスの開催が近くなってもそれらしい招待状は届かない。やきもきして待っていると突然メールが来る。「ドナルド・フェイゲン氏急病のため公演中止、スタッフは熟慮した結果、今回の目玉企画である彼とそのバンドのステージが実現できないために、ブルーノートフェス全体を止む無く中止することを決めました」と短いお知らせ。これにはびっくりした。フェイゲンバンドは確かにこのフェスの目玉だが、それ以外にも多くのミュージシャンが参加、3つの会場に分かれその演奏を競う...と言う、従来のジャズフェスには無いいわばロックフェススタイルのものだけに、中止までは決めなくても...と思ったが、スタッフ達の苦渋の決断。これは尊重せざるを得ない。それだけ「スティール・ダン」=ドナルド・フェイゲンの存在が大きく、ファンの期待もそこに集中していたと言うことだろう。

 ジャズファンは余り関心が無いかもしれないが、洗練された都会的なロック&ジャズスタイルの2人組バンド「スティール・ダン」は、あの人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」にも登場するほどの存在。フェイゲンの相棒ギタリスト&プロデューサーのウオルター・ベッカーは、残念ながらこの93日に死亡(享年67才)。フェイゲンも大事な相棒を失い、かなり気を落としているだろうことは想像に難くなかったが、その死も影響してかフェイゲンの急病で来日叶わず、フェスは雲散霧消してしまうこととなってしまった。ひろみをはじめブラジリアンジャズグループのダニ&デボラ等々、出演者たちも落胆しているに違いなく、何よりぼくらファンの失望も大きい。しかし決定は決定、来年のこのブルーノートフェスに期待するしかない。

 こうなればもう一つの横浜ジャズ、10月初めに開催され数多くのミュージシャンが登場する、国内最大規模の「横浜ジャズ・プロムナード」に目を向けるしかない。こちらのフェスも中心人物のメインディレクター、柴田浩一氏を招き番組で紹介する予定。氏は毎回フェスに登場するミュージシャンかシンガーを連れてスタジオに来てくれている。今回も誰がゲスト登場するのか、それもまた大いなる愉しみ。是非聞いてみてください。
 なおこの「テイスト・オブ・ジャズ」は、9月30日放送分から11月4日まで、メイン放送の土曜日18時半からの放送はお休みとなり、夜22時からがメイン放送となります。悪しからず...。
【今週の番組ゲスト:jジャズヴォーカリストの平賀マリカさん
7月リリースのアルバム『VINT AGE』から
M1
April in Paris
M2
So in love
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Angel eyes
M4
As time goes by

9月9日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2017/09/08(金) 19:00
テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.374~東京JAZZフェス2017】

 今や日本最大のジャズフェスとも言える「東京ジャズフェス」。夏の終わりの9
月最初の土・日、2日間にわたって行われるこのフェスに、今年も実直に2日間足を運んだ。今回でこのジャズフェスもなんと16回目だが、今年は再出発と言った意味合いもあり、この10数年続いて来た有楽町の東京フォーラム(記念すべき初回は調布の味の素スタジアム)から、今年は主催NHKのおひざ元、渋谷のNHKホールに会場を移しての第1回で、渋谷の街イベントとしての意味合いも含め開催されることになった。まあ一口に渋谷の街と言っても広いので、余り街全体を巻き込んだジャズイベントと言った感じには成り得なかったが、ニューオリーンズから呼んで来たストリートバンドなどの演奏行進などには人も集まったようで、それなりには話題を集めていた。ただ肝心のNHKホールの本公演の方は、ホール周辺事情などかなり疑問符が付く内容。まずホールの脇道=ケヤキ並木での恒例イベントは、外なのに大きな音は禁止とのことで、例年登場していた我らが早稲田ジャズ研のオンステージも実現不可能になり、およそ盛り上がりに欠けた。ホールの中の方も、慇懃無礼でヒラメ主義&半官僚機構のこの放送局らしく、自由度はかなり制限され、ジャズイベントらしい闊達さに欠け、お題目の「渋谷から世界に...(フロム・シブヤ・トゥ・ザ・ワールド)」とはだいぶ雰囲気も実態も違う感じ。更に公共放送のホールと言うこともあり、協賛各社のヴィデオなども昨年までとは違い会場では一切流されず、協賛社メリットはどこに...などと、いらぬ心配迄してしまう程だった。

 
さて昼夜2公演の方だが、山下さんのスペシャルユニットによる「寿限無」セッションの再演で幕を開け、サダオさん(渡辺貞夫)のデイブ・グルーシン、リー・リトナーと言ったかつてのお仲間との「カリフォルニア・シャワー」再演が大ラスを飾ると言う、かつてないラインアップ。J-ジャズ2巨頭の幕開けと大閉め、これが吉だったかどうかは...、聞いた方達それぞれの判断に任せるしかないが、何か今回のジャズイベント全体を象徴しているようで(かなり内向きと言うか縮み傾向)、ぼくは否定的に捉えざるを得ない。観客席はかなり満杯で興行的には成功とも言えそうだし、サダオさんとグルーシン、リトナー再開セッションも、あの時代を良く知るものには胸を打つものもあった(一番観客のリアクションが多かった)としてもなのだが...、全体の運営や仕切り、ステージ起用等々には、疑問符を付けざるを得ない感じがする。

 
さて今回の出し物の目玉になったのは2日目のトップに行われた、話題の才媛、狭間美帆が全体ディレクションとデンマークのフルバンドの編曲(作曲も...)を担当、かなり大掛かりなジャズ史俯瞰ステージ「ジャズ100年プロジェクト」だと思われる。ニューオーリーンズジャズから現代のコンテンポラリージャズまでをスクリーン映像も交え、リー・コニッツ、リー・リトナー、日野皓正、山下洋輔(彼女の師匠)など豪華ゲスト陣をフューチャーした形で、音で綴り上げると言う大胆な企画。彼女はコンパクトに見事にその企画のコアを抉り出し、その才能の豊かさを実証して見せてくれた。
 
この他にぼくが興味を引かれたのは、今年結成されたばかりと言うチック・コリアとスティーブ・ガッドの双頭新バンド(ラテンジャズ色横溢したぼくのお好みの生きのいいバンド)、ユダヤ系に中近東の音要素も加味し、ピアノトリオの新たな展開を提示したイスラエル出身の注目のシャイ・マエストロ・トリオ、そして大トリを彩ったサダオさんのスペシャルユニットの3ステージだった。また狭間セッションのゲストで登場したリー・コニッツは80才を優に超す高齢。さすがにその音はよれてはあったが、意気込みはまことに立派で、胸打たれる所も多々あった。

 これまでは毎回の昼夜公演にはそれぞれなにがしかのお題目(「ブルースの夜」等)が付けられていたのだが、それも今回は無し。いかに編成に苦労したのかが良く分かる訳だが、まあそうは言いつつもそれなりにそれぞれのステージを愉しんだのもまた事実ではある...。
 
特にサダオさんがアンコールに、グルーシンと二人であの復興応援ソング「花は咲く」を吹き始めた時は、いささかグッと来てしまった。やはりあれだけ感動的な場面を演出できるのは、サダオさんならではであった。
  
 
最後に一つ大変に残念だったのは、このジャズイベントを当初から実質的に仕切り、そのPRも兼ね我がジャズ番組にも毎年登場してくれていた、敏腕ジャズプロデューサーの八島敦子女史。その彼女がこの初夏、様々なストレスの為(?)からか病に倒れてしまい、このイベントの新たな立ち上がりを陣頭指揮出来なかったこと。彼女の心境を察すると本当に残念な思いもあるが、今回のジャズフェスはどうにか成功、来年もまた彼女のあの雄姿を見れるはずである。今年以上に真に開かれた素晴らしいフェスを作り上げてくれるに違いない。彼女のカムバックとその健闘を心から望みたい。

【今週の番組ゲスト:ブルーノートジャパン広報の岡田安正さんと、コットンクラブ広報の上神彰子さん】
今年3回目の開催となる「Blue Note JAZZ FESTIVAL」、横浜赤レンガ倉庫特設会場で923日・24日に開催されます。 

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FIRE / 上原ひろみ×Edmar Castaneda
M2Change of the Guard /  Kamasi Washington」
M3Holding On / Gregory Porter
M4Rock With You / DANI & DEBORA GURGEL QUARTETO」
 
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9月2日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2017/09/01(金) 19:00
テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.373~ジャズ映画「ロウ・ダウン」】

 ジャズプレーヤーあるいはシンガーをモデルにした映画、いわゆる「ジャズフィルム」はどうも今イチ面白味に欠ける物が多い感じがある。この手のものとしては、前にこのコラムでも取り上げた、チェット・ベイカーを描いた『ブルーに生まれて』、帝王マイルスの沈黙時代を取り上げた『マイルス・アヘッド』などが最近公開された。『ブルーに...』の方はかなりな佳品だったが、マイルスの方は愚作、そしてこの手の作品の代表格が、ジャズ好きの巨匠、クリント・イーストウッド監督による、天才チャーリー・パーカーの伝記作品『バード』と言うことになるが、これもイーストウッドらしからぬ余り感心しない出来栄えだった。どうもこうした作品、取り上げる対象に監督達の思い入れが強すぎたり、演じる役者の演奏風景などにもいささか熱が欠けているなど、様々な状況にもよるが余り芳しいものがない。そんな中ある友人から、あの伝説のピアニスト、ジョー・オーバニーを描いた映画があるそうで、これが結構良いらしいよ...と言う話を聞き、興味を掻き立てられたのが、その実態は分からなかった。それが先日国立にある行きつけのヴィデオ屋を覗くと、伝説のジャズピアニストを描いた作品...と惹句にあり、それが噂のジャズフィルムに違いないと確信、早速借り受け見てみることにした。4
年ほど前の作品で、日本未公開のこのジャズ映画のタイトルは『ロウ・ダウン』。

 「
ロウ・ダウン」とは俗語で実情と言った意味合いで、伝説のピアニスト、オーバニーの実情を描く...と言った感じなのかと思っていたら、これには原作があり著者は娘で作家のエイミー・オーバニーと言うことが資料から分かった。70年代初めその才能が再び認められつつあった時代の彼を描いたこの映画も、娘エイミーから見た父親、ジョーの姿が活写されており、このロサンジェルスのハイスクールに通う娘を演じるのが、美形ファニング姉妹の妹の方、エル・ファニング。このヒロインの彼女が実に可愛らしく素晴らしく、不安と期待が入り交じるこのアドレセンス期の少女の実情を見事に演じ切る。これだけでこのジャズフィルムは成功と思わせるほなのだが、父親のジョーを演じる個性派として結構注目を浴びている、ジョン・ホークス(今回初めて知ったがい渋くいい役者)も、写真で見る実際のジョー・オーバニーにも良く似ており、この繊細で天才肌のバップピアニストの心情・実情を描き出す。そしてもう一人、ジョーの母親を演じるのが名優グレン・クローズ。ジャンキーで薬を止めることが出来ず、収容所と自宅を行き来する(人生の半分は収容所にいたと自身で語っている)彼を励まし叱り愛おしみ、可愛い孫の世話も一人で引き受けると言う難しい役柄をこなしている。こうしたメインの役者達が全員実力派揃いだし、また余りクラブなどでの演奏風景も出て来ない~ジャズを前面に打ち出さない~のも好感が持てる。

 
ところでバップの興隆期、始祖チャーリー・パーカーともしばしば共演(パーカーの最初のピアニストとも言われた)、パーカーもその才能を評価していた白人ピアニスト、ジョー・オーバニー。彼が何故、伝説のピアニストと言われるかと言うと、パーカー共演時の素晴らしさでジャズ仲間達の口コミで評判を呼ぶが、実際にその演奏はアルバムに収められておらず、57年に吹き込んだ唯一のリーダー作も、リハーサルを収録したプライベート盤だと言うことで、実態の分からないピアニストとして幻度が高まったと言う訳。それだけにファンの関心も高くなる訳で、この映画の舞台となる70年代初め頃からカンバックも果たし、再び彼に注目が集まり以降88年に63才で亡くなるまで、10作近いアルバムを吹き込み、それらはどれもバップ魂の横溢した、切れ味抜群の素晴らしいものだった。しかしその生活は薬に溺れた、なんとも貧しく寂しく自堕落なもの。そんな彼を敬愛し常に行動を共にするいじらしい迄の娘エイミーの姿。離婚し別に暮らす母親もジャンキーで娼婦まがいの生活、エイミーに向かって"あんたは実の娘ではない"とまで言い切る。そんな悲惨な中にも、常に前向きに行動する彼女の目を通してみた天才ピアニストの実情。どうも一般の映画ファンは単なるジャンキー映画としか見ていないようで、「暗いだけで面白くない」と評価は良くないようだが、心に沁みる素晴らしい作品と思う。画面のトーンも暗く沈んだものだが、そこはかとない哀愁が感じられ胸に迫る。異色のジャズフィルムで一見の価値ありの作品だと思います。

【今週の番組ゲスト:ジャズテナーサックス奏者の中村誠一さん、ジャズボーカリストの紗理さん、父娘のお二人】
M1「小さな花 / 中村誠一」
M2
How Deep Is Your Love / 紗理」
M3
Joy Spring / 紗理&中村誠一」
M4
I've Got You Under My Skin / 中村誠一&吉岡秀晃」