5月27日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2017/05/27(土) 19:31

テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.359~私の好きなジャズ】

  この1年間、毎月最後の「テイスト・オブ・ジャズ」の時間は、ジャズ評論家の青木和富氏による100年を超すジャズ史のおさらい=ジャズのお勉強を続けてきたがそれも先月で終了、5月からは和富の「ジャズ・トーク」と言うことで、毎月テーマを設定しそれに関連したジャズナンバーを紹介して行く、言わば「耳で聞くジャズエッセイ」と言う趣きの企画を1年間を目途にスタートさせることにした。
 今月はまずその第1回で、そもそも青木和富とはいかなる趣向の男なのか...と言うことで、「私のジャズ経歴書」と言う内容でお送りすることになった。青木氏が選んだ5曲は別項にも記してある通り。まず最初は鈴木章治の「鈴懸の径」で、これはジャズと言うよりもポップスとして、戦後ぼくらの子供のころに大ヒットした和製ナンバー。ここから彼のジャズ人生がスタート、そしてラジオ全盛時代にジャズ番組と言えばこれ...と言った感じで、多くのジャズビギナー達(僕も当然その一人)がこぞって聴いた、ラジオ関東でDJのモンティ本田さんが真夜中にオンエアーしていた人気番組「ミッドナイト・ジャズ」のテーマ曲、ドラマー・チコ・ハミルトン・グループのエキゾチックでミステリアスなジャズナンバー「ミッドナイト・サン」。そして3曲目は青木氏が初めて評論を記した記念すべきアルバム、前衛派の闘士アルバート・アイラ―の代表曲「ゴースト」。そして70年代に全盛を迎えたフュージョンミュージックの代表格、アルト奏者デビット・サンボーンの「ウエイ・アウト...」。そしてラストにもう1曲、現在のクラシック界を代表するヴァイオリン奏者、クレーメルが奏する喜劇王チヤプリンが自身の映画の為に書いた「スマイル」。この5曲それぞれの曲についての彼の想いは、番組でじっくりとお聴き頂きたい。


 さてこのジャズ履歴書は、ぼくからのリクエストだったので、一応ぼく個人の5曲もここで一寸紹介しておきたい。

①MJQ「ジャンゴ」

②アート・ブレーキ―&JM「チュニジアの夜」

③マイルス・デイビス「マイ・ファニー・バレンタイン(リンカーン・センター・ライブ)」

④ゴンサロ・ルバルカバ&チャーリー・ヘイドン「ノクターン」

⑤カーリン・クローグ「これからの人生」

まあざっとこんな感じか...。こう並べると実に物わかりの良い常識的な旋盤になってしまったが、やはり5枚(曲)は中々に難しいところで、これは致し方ない所なのか...。一寸付け加えるとMJQ=モダンジャズカルテット、この典雅なバロック風室内楽ジャズグループによって、ぼくは高校1年の時にジャズ(モダンジャズ)開眼を果たした。周りには誰一人ジャズ好きなどはおらず、孤独にジャズ鑑賞を深めていった若き日だった。ブレーキ―&JMは日本のジャズ開国を進めた黒船とも言える重要な存在で、この「チュニジア」でのメンバー全員によるエキサイティングなラテン系打楽器クラベスの殴打(クラーベ)は、後になってぼくをラテンジャズの蠱惑の世界へ導くきっかけにもなっている。帝王マイルスの演奏は余りにも有名な究極の名演。キューバのピアニスト・ゴンサロ・ルバルカバとベーシスト、故チャーリー・ヘイドンとの共演は、メキシコのボレロを演奏した素晴らしい作品。このサウダージ感(郷愁)、涙なしには聴けません。そしてラストは北欧の名花、カーリン・クローグが世界的な映画作曲家、ミッシェル・ルグランの銘品を歌い綴ったもので、ぼくのボーカルの1枚はこれで決まりです。それほど彼女の感情表現に惚れ込んでいるのです。
 
と言った感じで何れまたぼくのお好みナンバー、お気に入り盤については、書き記すことがあると思います。その時までまた...。


【今週の番組ゲスト:音楽評論家の青木和富さん】
今週から毎月最終土曜日は新シリーズ 「ジャズトーク」をお送りします。 
M1「鈴懸の径 / 鈴木章治」
M2Blue Sands / Chico Hamilton
M3 Ghosts / Albert Ayler
M4'Way' Cross Georgia / David Sanborn
M5Smile / Gidon  Kremer 
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5月20日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2017/05/19(金) 19:00
テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.358~GWの追分周辺は...】

 GWは追分の山荘に居た。4月30日から
1週間以上、かなりたっぷりとした休暇だったが(まあ東京にいても毎日がほぼ日曜日とも言えるのだが...)、車の渋滞など混雑を極める軽井沢の街方面に出ることも無かったし、事故の後の療養中で(調子は絶不調...)まず喫緊の問題をクリアーしないとならず、連日山荘周辺の東信地域(軽井沢、佐久、上田等々)の温泉巡りが今回の主行事だった。この地域での温泉のお勧めは先ずはこのコラムでも再三登場の温泉水も汲める上田市郊外の室賀「ささらの湯」。続いては以前毎日新聞にも紹介記事を書いた小諸市郊外の布引温泉。この2つがマイベスト温泉だが、この軽井沢近辺では何と言っても車で1時間ほどの草津温泉とすぐ隣の万座温泉、この2つがビッグ2。だが現地に行くには高い山超えをしないとならず、かなり大変で頻繁に足を延ばすことも叶わない。そのため近場でのお勧めは上記の2つの他に、泉質の素晴らしさで佐久市望月の春日温泉、上田市のお隣青木村の田沢温泉、この2つの老舗温泉(平安時代から続くとも言われる)になる。室賀温泉と布引温泉には今回特に熱心に通ったが、果たして交通事故の療養に好いのかは今でも判然とはしていないが...。

 
ところで今年のGWは全体的に天気にも恵まれ、軽井沢周辺も天気晴朗で快適な休暇週間だったが、肝心の人出は中心街近くに行ってないのでしかとはしない。ただ周辺の車の混雑ぶりからも相当な数が出ていたことは窺える。今回のGWは半ば頃から3日ほど娘夫婦が山荘に泊まりに来ており、色々と周辺を案内させられた。まず2人が行きたいと言ったのが、GW中に開催されていた恒例の佐久市國際バルーンフェス。これまでも数回イベント会場には行ってるのだが、到着時間が遅く既にバルーンは飛んでいなかったり、また強風で飛ばなかったりと、多くのバルーンが飛翔している所をまともに拝んだことは無かった。それだけに娘夫婦と共に早朝5時半に山荘を出発し、バルーン会場の千曲川河川敷に向かったが、会場到着が朝の6時半でも既にバルーンは30機程が天空に舞い、実に幻想的な風景で見事な限りだった。ぼくもこれほどの数のバルーンが舞うのを間近で見たのは初めてのこと、感激の光景でした。早朝にも関わらず多くの人達が河川敷会場に集まり熱心に声援を送っていたが、流石に佐賀と並ぶ正式な国際バルーンコンテストだけあり面白い競技ではあるが、こちらは競技ルールも分からぬ素人。ただただ空漂うバルーンの美しさに感激していただけでした...。

 このほかにも
娘夫婦を色々な店に連れて行ったが、肝心の軽井沢のお店には混雑も考え行かず仕舞い。この軽井沢で皆様に是非お勧めしたいのは、ぼくが自称応援団を務めている「カフェ・グルマン」。元広告マンのマスター平井氏が3年ほどかけてコツコツと手作りした個性的なお店、そしてフランス修行した娘さんの手作りキッシュなどの軽食、そしてテラスから御影用水越しに見るお山(浅間山)の見事さ、何は置いても軽井沢に来たら是非行ってみる価値ありのお店です。場所は街の端でいささか遠いですが、追分にあります(正式には御代田町ですが)。そしてもう一つ、こちらは軽井沢のメインに位置するランチ店のペンション「星の子」。ハンバーグやフランクフルトなど数種類のランチがあり、値段は何とワンコイン=500円。数年前に知り合いからこの店(ペンション)の存在を教えてもらって以来、中軽井沢に出る時は必ずここによるほどの御贔屓。軽井沢の町役場の裏にあり道のりはいささか分かりにくいが、そのぶん味、コストパフォーマンス等言うことなし。カナダ人の旦那に威勢の良いカミさんで切り盛りしている林間のペンションだが、今ではそのランチによって別荘族などにも大人気の店。夜はなかなか高価なステーキなどを出すようだが、ランチはコスパ最高の旨いメニュー揃い。一度行くと病みつき間違いなしです。
 
 
この他軽井沢を除く東信地区でぼくのお奨め店(保証済みの店ばかり)は、先ずウナギの依田屋。しなの鉄道・田中駅近くのこのうなぎ屋も絶品。地元ではかなり良く知られた銘店だが、惜しむらくは全国区になっていない。値段もさほど高くなく味は絶品。山荘に友人などが来ると一度は連れて行く店で、誰もが感激してくれるが、最近はぼく自身の財布事情が芳しくなく余り行っていない。ウナギでは長野県で最高点献上のお勧め店です。同じ田中駅(東御市)から丘の道を上がり、浅間サンラインにぶつかると、ここには焼肉の名店がある。七輪亭。ここも人気の店で好評に応え数年前には松本市にも支店を出している程。味の良さに加え店のロケーションの良さもあり眺望も抜群。上田市を含む塩田平が一望出来る。そしてもう一軒、これは殆んど話題にもなっていないラーメン店なのだが、上田市の郊外にある「寿分」。ここが上田市の数ある(いや東信州でも...)ラーメン店の中でも抜群の旨さ。どうしてタウン誌などで評判にならないのか本当に不思議でもある。ここは「ささらの湯」に向かう途中にあるお店、街の外れに位置しておりそのロケーションで大分損をしているのだろうが、丹念に古き良き時代のラーメンの味を再現しており、一度食べると病みつきになること請け合い。ぼくも手打ち麺と言う看板に惹かれ偶然入ったのだが、温泉探索の途中や菅平でのラグビー観戦の後に、友人達を連れわざわざこの店を訪れることもしばしば。この店も感激の声多々で、口うるさい娘夫婦も「うまい」を連発していた。まあこうしたぼくの軽井沢&東信お勧めの店情報は、今度改めてまとめて書き記したいなーと思っています。

 こんなGWだったのでCD整理を済まそうと意気込んでたものの体調不調の為叶わず、余りアルバムも耳にしていないのだが、たまさか机乗っかっていたフランスの中堅ギタリスト、シルビアン・リュックのソロアルバム『アンブル』が思いのほか良かった。自身のオリジナルや「いそしぎ」「オール・ブルース」等の有名曲をソロギターで綴ったもので、もう10年以上前の作品。好アルバムを出すことで定評のあった「ドレフィス」(今はもう会社を閉めたが)から出されたもの。こうした作品がCDの山の中から見つかる辺り、もう少し真剣に自身の在庫盤を聴く必要があるなと、痛く反省しました。それにしても事故の後遺症、早くどうにかならないものですかね...。これまでの行いのせいかも知れませんが、頗る不調だけにせっかくのお休み、残念ながらお愉しみ全開とは行きませんでした。
【今週の番組ゲスト:ジャズヴォーカリストの山口葵さん】
 Swing in Strings』から
M1Charade
M2Stolen Moments
M3「黄昏のビギン」
M4Lover, Come Back to Me
M5The Girl From Ipanema

5月13日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2017/05/12(金) 19:00
テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.357~ジャズ・ヴォーカル・コレクション好評】

 今から40年以上も前のこと、未だジャズが若者達の間で勢いを持っていた頃、即ちぼくの大学生時代以降、ラジオ局(日本短波放送/現日経ラジオ社)に入り、そして今は亡き先輩ジャズプロデューサー、木全信氏から「テイスト・オブ・ジャズ」の担当を任された1970年代初め頃までは、東京に数多くのジャズ喫茶(ジャズアルバムを聞かせる喫茶店で当時は輸入盤など高価で買えなかった)があった。ジャズの街新宿には伝説の「木馬」「渚」「ポニー」、そしてタケちゃん(北野武)がバイトをしていたことでも知られる「ジャズ・ヴィレッジ」等々、ざっと20軒近くはあったはずで、ぼくの生まれ育った高円寺の街にも、「毘沙門」など6~7
軒はあったはず。ジャズ鉄道線とも言える中央線沿線には、どの街にも数軒のジャズ喫茶はあったと思われる。それほどの隆盛振りだったのだが今やジャズ喫茶は見る影もない。しかし中には老舗として今なお頑張っている店もあり、新宿には「ダグ(旧ディグ)」、吉祥寺には「メグ」、そして四谷に「イーグル」、ここら辺がジャズ御三家と言った感じ。これにぼくの早稲田大のジャズ研仲間、幸田稔君がオーナーのジャズクラブ「J」も加えることが出来そうだが、そのジャズ喫茶御三家には、それを支えて来たジャズ界裏ボスとも呼べる名物オーナーがいる。「ダグ」の中平穂積氏、「メグ」の寺島靖国師、そして「イーグル」の後藤雅洋氏である。

 
このうち後藤氏が最も年下でぼくとほぼ同年代。彼は確か慶応大の学生時代から既に店を始めていた筈で、「イーグル」は四ツ谷駅から歩いて数分のビルの地下にあり、ここには場所柄、上智大の学生が多く集まっていた。この店で盤回しのアルバイトやの授業の合間を過ごした杉田宏樹、村井康司などは、今やジャズライターとして活躍、彼らは「イーグル派」等とも目されており、その総帥が後藤氏という図式になっている。このうち村井氏は小学館の社員(辞書編集部のはず)。そこでジャズ関連企画も頼まれることもあるようで、そこで実現したのがCDブックとも言えるジャズシリーズ企画。この監修を師とも言える後藤氏に頼み数年前にジャズ企画がスタート、月2回発行のジャズCD本は中々の好評で、今は3期目でジャズ・ヴォーカル・シリーズとなっている。このヴォーカル・シリーズは最も読者受けが良い様でシリーズの続編が決定、この5月からスタートすることになった。そこでこのシリーズ、特にヴォーカル・シリーズの好評さの要因などを伝えて貰おうということで、後藤氏と小学館のシリーズ担当者に今回番組ゲストに来てもらうことにした。後藤氏は久々の番組登場である。

 元々このジャズCD本企画、マイルスやロリンズ、コルトレーンと言った大物達をピックアップしたもので、それらが一巡し次に何を...となった時に、苦肉の策として出てきたのがボーカルものだったらしい。しかしこのボーカル企画が女性達にことのほか受け、読者層を大きく拡げたのだと言う。後藤氏もこれにはニンマリと言った感じで続編シリーズの第一弾は有名ミュージシャンをバックにしたジャズ・ヴォーカルの名唱と言うことで、ヘレン・メリルの「帰ってくれたら嬉しいわ...」(夭逝した名トランぺッター、クリフォード・ブラウンとの共演)、北欧の名花モニカ・ゼッターランドの「ワルツ・フォー・デビー」(ビル・エバンスとの共演)など代表的ナンバー12曲が収められている。後藤氏自身もこのヴォーカル・シリーズを監修するまでは、そんなにこの分野に関心が高く無かったのだが監修してみて教えられることも多かったと言い、何より女性ファンが増えたことが嬉しいとも語ってくれた。

 なおこのボーカル続編シリーズの誕生を期して、小学館編集部では読者プレゼントとしてサラ・ヴォーンの名盤『枯葉』のジャケットを写し込んだブラックトートバックを作成。なんとこの素敵なトートバックと新ボーカル・シリーズの第1弾CDムック本を、番組リスナーにそれぞれ5名プレゼントしてくれることになった。

 お申込の
宛先はおハガキで 
〒105-8565 港区虎ノ門1-2-8虎の門琴平タワー 日経ラジオ社「テイスト・オブ・ジャズ・プレゼント」係まで
またはこの「テイスト・オブ・ジャズ」サイトの右側「番組宛メール送信フォーム」からプレゼント希望と記し(番組の感想などを添えていただければ幸いです)お送りください。抽選で合計10名の方へプレゼントします。素敵なバックですのでぜひご応募ください。


【今週の番組ゲスト四谷ジャズ喫茶「イーグル」店主の後藤雅洋さん(右)、小学館「 JAZZ VOCAL COLLECTION」編集長の小林慎一郎さん(左)】
M1My Foolish Heart / Tony Bennett & Bill Evans
M2
Waltz For Debby / Monica Zetterlund & Bill Evans
M3
The Man I Love / Joni Mitchell & Herbie Hancock
M4
You'd Be So Nice To Come Home To / Helen Merrill & Clifford Brown

5月6日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2017/05/05(金) 19:00
テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.356~ブルージャイアント新展開】

 ジャズやジャズメンを素材にしたコミック~ジャズコミックではおそらく世界最高峰とも言える石塚真一の「ブルージャイアント」。文化庁の漫画大賞も受賞しているこのジャズコミックが国内編を終了、いよいよワールドワイドな展開を迎えることとなり、タイトルも「ブルージャイアント・シュープリーム」に変更、そのコミック版の第1集がこのほど登場した。「ブルージャイアント」とは天文学で言われる超巨星のことで、ここではジャズテナーに目覚め世界一のジャズプレーヤーになることを目指し成長していく若者、宮本大を指している。仙台で生まれ育ったバスケット少年、宮本大がある日突然ジャズの面白さ、楽しさに目覚め、大学受験も止めテナープレーヤーになろうと独学で仙台の広瀬川河畔で練習を積む。今から半世紀ほど前、即ちぼくらの若い頃ならいざ知らず、最近のジャズを志す若い連中は国立音大や洗足音大等のジャズ科、あるいは直接バークレー音楽大やカーティス音楽院あるいはNY州立大などの本場のジャズ科を目指す筈なのだが、彼はそうした既成のジャズ路線を歩かずひたすら自身で道を切り拓き、たまたま彼の川縁での独学練習を耳にしたNY帰りのジャズ教師(かつてはかなりその将来を嘱望されていた人物)が、そのプレーに関心を持ち弟子に迎えてひたすら腕を磨き、その後単身上京しライブの現場で徹底して腕を磨いていく。まあまさにかつてのジャズプレーヤーの成長そのままの展開。そしてブルーノート東京にも似たライブハウスで彼のグループ「JASS」(テナー、ピアノ、ドラムと言う変則トリオ)が演奏、日本での活動はそれでお開きとなり(単行本10巻)、彼は単身新たな世界を目指す...。

 
このジャズコミックの面白さは、大と言う意慾あふれるいささか向こう見ずな好青年を通し、ジャズの持つ何とも言えない蠱惑(こわく)力が見事に描き出されていること。この蠱惑力はその初期の仙台編に最もよく表れており、テクニックは無いが野太く力強いテナートーンでひたすらその情熱を奏で上げる。その極致が仙台のジャズフェスでの単身路上ライブ。そのソロ演奏を立ち止まって見続ける仙台市民の驚愕の表情、それが2ページにわたり30コマ近い描画として丹念に描き出される。ジャズの至福をこれほど見事に描き出した成功例は無い。ただし彼が東京に出て仲間とグループを組んでからは、本格的なジャズのお勉強も入ってくるだけに、いささかそのジャズコミックとしてのパワーとエネルギーは損なわれてしまう。まあそれも無理からぬ所でそのため有名ライブスポットでの演奏を最後に、東京編は突如打ち切りになる訳である。そして次に大が選び出した修業の場、それが今混迷を深める欧州~ドイツの首都ベルリン。言葉も全然できない彼がこれからどんな修業を積むのか...、そして憧れの本場NYへどう向かっていくのか...。
 
スタートのころの様な愉しみはいささか薄れたとしても、このジャズ・コミックはそのタイトル通り光り輝いている。頑張れ宮本大と一声かけたくなる。
【今週の番組ゲスト:ベーシストの加藤真一さん】佐藤允彦さん(Pf)とのデュオアルバム『An evening at Lezard』から
M1「Close Enough for Love」
M2「Theme for Lezard」
M3「When October Goes」
M4「Thus the Song Passed」