お知らせ:

競馬が好きだ!

番組へのお便りはこちら
こんばんは、大関です。

この2週間ほど、日本競馬界は「巨星落つ」という悲しい知らせに包まれていたと言えるでしょう。ディープインパクト死す、の報から僅か10日、日本の種牡馬リーディングで近年ずっとディープインパクトの2位を保持していたキングカメハメハまでもが、天に召されたのです。

サンデーサイレンスの最高傑作ともいえる英雄の1歳年上にして、サンデーサイレンスの血を全く持たぬ大王。歴史が少しずれていたら、この2頭は直接対決していたでしょう。結果的にはそれが実現しなかったのが、物語の第二章への伏線だったのかもしれませんが。

この2頭がターフを沸かせていた頃、自分は茨城の片田舎から東京へ出てきた大学生。正直、キングカメハメハも、ディープインパクトも、当時のワタクシ大関にとっては「にっくきな目の上のたんこぶ」のような存在でした。

2004年のクラシックを「コスモバルクのいた年」として記憶している方も少なくないでしょう。悲願のダービー制覇を目指す岡田繁幸総帥率いる目指すマイネル・コスモ軍団の総大将は、ホッカイドウ競馬所属のまま中央クラシックに名乗りを上げてきた在野の野武士コスモバルク。血統的にもハッキリ言って地味。そんな馬と五十嵐冬樹騎手のコンビが、百日草特別、ラジオたんぱ杯2歳ステークス、弥生賞と中央のエリートをばったばったとなぎ倒して天下取りに突き進む―。地方出身の自分にとっては、こんな感情移入できる存在はいませんでした。だからこそ信じていたのです。71代目のダービー馬は美浦でも栗東でもなく、門別に凱旋していくのだと。皐月賞はダイワメジャーに押し切られたとは言え、18番枠が全て。負けて強し。歴史は変わる。そう信じて疑っていませんでした。

しかしご存知の通り、71代目のダービー馬となったのは大王キングカメハメハ。直線、馬場の真ん中で何とか抵抗しようとしたコスモバルクが、外から捻じ伏せられて行く風景に熱狂する事もできず、寂しさすら覚えていました。結局自分にとってのキングカメハメハは「コスモバルクの(地方の)夢を打ち砕いた馬」。平たく言えばヒールでした。

2004年秋、キングカメハメハが電撃的にターフを去った時、正直あんな強い馬は当分出てこないだろうと思っていました。しかし、翌年のクラシックは、同じ勝負服のもっと強い馬が席巻していったのです。ディープインパクトという馬が。

そして、やはりディープインパクトのいた時代にも、うがった見方をしていました。ノーザンファーム生産のサンデーサイレンス産駒、ダービー馬を前年に送り出した馬主に、管理トレーナーは数々の名馬を手掛けてきた名伯楽。そして鞍上には日本一の騎手。二十歳そこそこの自分はこうひねくれていました。「全てを与えられた良家のお坊ちゃまなんて、どうして応援する気になれるかよ」と。だからこそ、有馬記念でハーツクライに負けた時には「やった!」と内心、なぜか静かになった中山で喜んでいたのです。馬券はとことん負けましたが。

むしろ、翌年のクラシックのメイショウサムソンの方が、コスモバルク並みに肩入れして見ていました。浦河の小さな牧場で生まれ、決して良血ではない。叩き上げで強くなった馬の背中にはベテランの苦労人石橋守騎手。ぜひ三冠を獲って、ディープインパクトと三冠馬対決をと願っていました(結果は二冠止まりでしたが)。その2頭が初めて対戦した2006年のジャパンカップも思い出深いもので、自分は東京競馬場のスタンドにいました。メイショウサムソンの単複と、コスモバルクの複勝を握りしめて。

なぜ思い出深いかと言えば、ゴール後に競馬場全体が「ああよかった、やっぱりディープはディープだ!強いんだ!」というお祝いムードになったのを感じると、人の波に逆らって即座に競馬場から出たのをよく覚えているからです。結局ディープインパクトも、自分にとってはヒールだったのです。

しかし入社して、競馬に仕事として接していく時代になるにつれ、この2頭のスター性と日本競馬においていかに素晴らしい存在であるかを、これでもかと知ることになりました。初年度から父のようにクラシックタイトルを獲っていくディープインパクト産駒、そしてクラシックも、短距離も、ダートにも歴史的名馬を送っていくキングカメハメハ産駒。その血脈からジェンティルドンナ、ロードカナロアはじめ数々の名馬が生まれたことは今さら書くまでもないでしょう。今やその血脈は、世界のビッグレースも勝っていく時代になったのです。実況という立場でも、この2頭の素晴らしさを感じるシーンは数えきれないくらいありました。

だからこそ今はディープインパクトや、キングカメハメハにこう思います。「若気の至りだとは言え、あんなに捻くれて応援するもんか!だなんて思って申し訳なかったなぁ。そして、ありがとう」と。

近未来には「ディープインパクト産駒も、キングカメハメハ産駒もいない時代」がやってきます。正直、5年後の種牡馬リーディングがどうなっているのか、デロリアンがあるなら乗って見に行ってみたいと思うくらいです。誰も予測できない未来に思いを馳せるって、楽しいことだと思いませんか?そんな時代の名馬の誕生に、実況という立場で巡り合う時は果たして来るのでしょうか。

最後に。種牡馬の覇権争いも今後は「スラムダンク」の湘北―翔陽戦のあとに観戦していた陵南の田岡監督が語ったようになっていくのでしょう。

「これで牧・藤真時代は終わった...。神奈川は群雄割拠の戦国時代が始まるな...!」

さて本題。今日の「競馬が好きだ!」は真夏のダートグレード集中期間を。その中から、明日に控えたサマーチャンピオン(佐賀)の話題を中心にお送りしていきます。お楽しみに!

(英雄の目に涙。このレープロの写真、やっぱりいいなぁ)





お知らせ

お知らせ一覧