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競馬が好きだ!

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と言っても「実況する」という視点での振り返りです。どうもこんばんは大関です。

あれだけ盛り上がるGIの実況っていいね、とよく言われますが、ハッキリ言って胃がいつもキリキリしてるんですよ(笑)。しかも、色んな所で流れるので、「(得てしてゴール前)ああ失敗した...」という記憶を、聴くたびに呼び戻されます。前回実況したGI(去年のマイルチャンピオンシップ)が、正直自分に対してもう何をやってるんだと突っ込むしかない実況だったので、今度同じような事があれば...と、正直追い込まれている気分ではありました。

今年も担当する事になったフェブラリーステークスの実況。登録が出て、まずはメンバー構成をじっくり考えることから。東京大賞典、東海ステークス、根岸ステークスと実況してきて、最優秀ダートホースのルヴァンスレーヴ、そのルヴァンスレーヴが勝ったチャンピオンズカップで2着だったウェスタールンドがその3レースに不在。東京大賞典がオメガパフューム、根岸ステークスがコパノキッキングとタレント揃いと言われる4歳世代、東海ステークスは破竹の快進撃を続けていたインティが逃げ切って6連勝。あとはサンライズの2頭ノヴァとソアといった有力どころ。

そして、やはりコパノキッキングに藤田菜七子騎手が乗る、という事で注目度が俄然上がった事も当然意識はありました。最近は差しにシフトして来たとは言え、スピードの違いで先行してかつて結果を出していた馬が「初のマイル」でどういう競馬をするのか。「(女性騎手史上初のJRA・GI制覇という)歴史的快挙の瞬間がもしかしたら実況するレースで訪れるかもしれない」という事実と、レース当週になっての盛り上がりが、自分を何かいつもと違う、ふわふわした感覚にさせていました。

結局、自分の中での構図は「崩れないゴールドドリームがレースの軸になる馬。そこに前にいるはずのインティ、オーナーがレースの作戦を明かした以上、多分後ろにいるはずのコパノキッキング、あとは差し組のノンコノユメやサンライズノヴァがどう挑むか」という組み立てになりました。


(当日の東京競馬場。朝からいつになくざわざわしていました)


何度経験しても、GIの発走直前は心臓が飛び出てくるんじゃないか、と思うくらい緊張はします。去年よりも明らかに場内のボルテージが上がっている、と感じながら、何とか自分の緊張感をなだめていざレースへ。

ゲートが空いた瞬間、一番良いスタートを決めたサンライズソアと、馬群から遅れたノンコノユメが見えました。実況アナによって、スタート直後の描写でどこへ重きを置くかは個性が分かれる所ですが、自分の場合は「なるべく良いスタートを切った馬をまず言う」というポリシーです。なぜかと言えば、好スタートを決める事と、後ろからになる事を相対的に比較したら、勝利につながる確率が高くなるのはどちらか?と考えれば前者であろう、と考えているからなのですね(ゴールドシップが断然人気で大きく出遅れた2015年の宝塚記念のようなケースは別ですが)。なので反射的に真っ先に「好スタートを決めたサンライズソア」の方が出た訳です。

そのサンライズソアと、芝スタートを無難にこなしたインティが前に出てきて、これは先行争いに決着がつくまで描写した方がいい、と思ってインティが先手を取り切るまで視線は前に。そこからゴールドドリームが中団、ノンコノユメが巻き返してサンライズノヴァ後方、コパノキッキングが一番後ろまで下げた!という所まで追ったら、3コーナーから4コーナーでは根岸ステークスの再現を狙うように内のポジションを離していないクインズサターンやユラノトの位置も言って確認しつつ直線へ。

直線はもう「インティ対押し寄せる差し馬勢」という組み立てやすい構図だった、という事に救われていたと言えるでしょう。明らかに後続を振り切ったインティに、やはり詰めてきたゴールドドリーム。勝つのはこの2頭のどちらか、になった事が実況しやすさに繋がったのは事実です。あとは、脚色としてまだ残っていそうな内から脚を使うユラノト、クインズサターン。そして人気と注目度を考えればコパノキッキングを直線で触れない訳にはいかないだろう、と考えていたので外を見やって探すと、ああ、伸びてはいるけどさすがに前と離れすぎだ...と思えて出てきたのが「コパノキッキングはまだ中団外!」だった訳です。

最後はもう残るか、差し届くかの世界。ゴールドドリームが勢いでは明らかに勝っているけど残り距離を考えればインティがこれは残るだろう、とゴール寸前では見えていたので、「インティだゴールイン!」。素早く2着と3着を整理して、ゴール後に「インティ7連勝!初のマイルでも、初のGIでも、勢いは止まりませんでした!」で締めました。ちなみに、ゴール後に何を言うかはハッキリ決めていません。「この馬が勝ったらこういう記録になる」という事実は塗り絵の余白にかいつまんで書きますが、出たとこ勝負だったりします。

今回も、どんなレースでも「あー、もっとこう出来なかったのかな」と後悔、反省する点はあるのですけど、自分が実況したGIという観点では、少なくとも去年のマイルチャンピオンシップより後悔する点が少なかったのかなと思うのですね。極力「ゴールイン!」の『ン』の音が出た瞬間に馬の鼻先がゴールに入るようアジャストさせる。そしてゴールに入ったらすぐに2着と3着を言う。当たり前にやらなきゃいけない事に「今度は」即座に対応したという意味で。組み立てやすいレースの形だった事に多分に救われていた面は勿論あるのですが。

毎度GIの度に書いているような気がしますが、GIを実況するといつも「大阪支社の3年間がどれだけ自分にとって大きかったか」を感じるのです。毎週のように、藤田直樹アナに1レース実況が終わるたび「おい大関、今の実況は何や!」「実況引退して何年も経っとる俺よりも、脚色の見極めが遅れて後ろから言われとる事を恥ずかしいと思わんのか!」と厳しく、ロジカルなダメ出しがある。早く次のレースの馬を記憶したいのに。ハッキリ言ってここでも胃がキリキリしてましたが、それを経験して、実況の仕方の根本から叩き直して貰っていなかったら、自分は今GIのプレッシャーに(どうにかでも)耐えられていないでしょう。だからこそ、あの大阪の3年間で厳しく鍛えられて本当に良かった!

実況アナを育てるのはやはり方々からの「あの実況は何や!」というお声です。それも、感情論ではなく、ロジカルに語られると一段と効きます。そんな視点で見てくださるファンの方々が増えてきている様なのは何とありがたいのでしょう。「感想」ではなく鋭い「批評」は、メディアとしての弊社の実況、中継のクオリティを一段と高めてくださる。それに応えられる自分でいなくては。またGIを実況して、そんな事を感じつつ今キーボードを叩いています。

さて本題。今日の「競馬が好きだ!」も、今週なかばの地方重賞の見所などを中心にお送りしていきます。お楽しみに!


(フェブラリーSの塗り絵と、GIで必ず作る出走馬に1頭ずつ作ったメモ)

 

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