【がんになっても安心できる国づくり】
NPO法人ジャパン・ウェルネス
プログラムディレクター 大井賢一
麻生政権から鳩山政権へと政権交代がなされたが、首相や閣僚たちの言葉や行動がブレるという現象に変わりはなかった。ブレない人間に共通するものは何か。
それは「他者に尽くす」ということだろう。
他者とは、家族や共同体、そして国家を指すのだと思う。
ユダヤ系ポーランド人のヤヌシュ・コルチャックは小児科医であり作家であり教育者だった。
1939年、ドイツによるポーランド侵攻により、ナチスの弾圧はコルチャックの孤児院にも及んできた。
ナチスの将校は子どもたちをトレブリンカ強制収容所に連れて行くと言う。ここに行けば間違いなく殺される。
彼は子どもたちだけを行かせることを拒み、自らも同行した。将校は有名人の彼を殺したくはなかったが、彼は頑として聞かない。
恐怖に震える子どもたちの傍で彼は、「先生が一緒だから怖がることはないよ」と優しく語りかけ続けた。
そして、教え子たちとともにガス室に消えていった。
コルチャックは結果的に子どもたちを虐殺から助け出すことはできなかった。
しかし子どもたちは死の間際まで安心感に包まれていたはずである。彼の死は無駄ではなかった。
今の日本に子どもたちに尽くすことができる教師はどれだけいるのだろうか。子どもたちは身近な大人たちの振る舞いをしっかりと見ているものである。
子どもたちの眼には、政権を担う政治家たちの姿は見習うべき手本として映っているだろうか。
国家国民に尽くすブレない政治家だと見られているだろうか。
ミャンマーのアウン・サン・スー・チーは軍政に虐げられている民のために政治活動を諦めない。
彼女は決して己を捨てて国家に尽くしているわけではない。他者に尽くし、国家国民に尽くすことによって彼女は人間として成長している。
貧しく弱い者たちのために身を捧げたマザー・テレサやマハトマ・ガンジーも同様である。
彼らは他者に尽くすことにより自らの人間性を成長させ、その結果として名誉や伝説を残している。
鳩山政権を継承した菅政権は、夏の参院選での勝利という目先の利益に囚われていないだろうか。
がん対策基本法が成立して4年が経過したが、がん政策においてコルチャックのような安心を感じられないという声が大きいのではないだろうか。
参院選後の政治には、他人に尽くし、国家に尽くす、そして何が起きようともブレない精神的軸を持った政治、そしてがん政策を期待したい。
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