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2022年5月31日、ラスアイファンは生涯、この日を忘れないだろう。ラストアイドルがなくなってしまった。 東京地方は朝方から小雨、ラスアイファンの涙雨かと思ったが、午後からは上がり、フェアウエルパーティーの足に影響が出なくてよかった。仕事で彼女たちの最後の姿を見ることができなかったのが心残りだ。 29日のラストライブ、素晴らしかった。夜の部の開演前、会場付近に佇むファンたち。手に手にメンバーの名前が大書きされたうちわ、首にはマフラータオル。推しメンのファンコミュニティーらしき集まりもある。こんなにたくさんのファンがいるのに、なんで今日で終わりなんだと、しみじみ思った。 開演を待つファンの皆さんの間には、湿っぽい空気はあまりなく、達観したような、悟りきったような表情の方が多いように見えた。最後、彼女たちを明るく送り出そう、最後の最後まで見届けよう、そんな空気を感じた。共にラスアイを応援してきた仲間たち、妙な連帯感が芽生え、見ず知らずのファンの皆さんと握手したいような気持ちになった。 これまでの人生で、スポーツ、映画、芝居、ミュージカル、オペラ、クラシックなど、様々なエンターテインメントを見てきた。生涯見たエンタメの中で、ラストライブは最高だった。間違いない。昼の部、冒頭の「僕たちは空を見る」のイントロから涙腺が緩んだ。以後、アンコールの最後、「眩しすぎる流れ星」まで、じわじわじわじわ涙があふれ続けた。こんな経験は初めてだった。 あの涙は何だったのか。悲しい涙か、ちょっと違う。悔し涙でもない。嬉し涙のはずがない。もしかしたら幸福の涙だったのかもしれない。人は幸福を感じる時、あのような後から後から湧いてくるような涙を流すのだろうか。ライブ会場で、筆者は間違いなく幸福感に包まれていた。 席が上階だったので、舞台を俯瞰できた。「大人サバイバー」や「青春トレイン」の美しさ。完成度の高い芸術作品のようだった。2期生の「愛の答え合わせ」、しびれた。これを聴くのが最初で最後なのかと思うと、胸が締め付けられる思いだった。アンダーの「なんか、好きだよ」、かわいかった。1期生の「青春continues」、さすがのひと言だった。間島和奏さんが長い黒髪をばっさり切って登場、きりっとした表情も併せ、最後のライブにかける彼女の決意が滲み出ていた。実に恰好よかった。 ラスアイのライブはもう二度とない。その現実をまだ受け入れられない。ライブ明けの昨日、出社はしたものの腑抜け状態だった。何もやる気が起こらず、頭の中でラスアイの楽曲がエンドレステープのように流れ続けた。明けて今日、まだ抜け殻状態だった。喪失感が半端ない。長いロスタイムになりそうだ。 ラストアイドルと同じ時代を生きて、その歌とダンスを生で見ることができたのは幸運であり、幸福だった。もうこんなアイドルグループは出てこない。まもなく5月31日が終わる。ラスアイを応援した日々に終止符を打つ時がきた。今は感謝の気持ちしかない。ラストアイドル、ありがとう。

(日本経済新聞 編集委員 鈴木亮)

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