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5月。吹き抜ける風はさわやか、暑くもなく寒くもなく、1年で最も快適に過ごせる最良の季節。いつもなら5月は心が浮き立ち、足取りも軽くなるのだが、今年は違う。ついに5月がやってきてしまった。できれば来てほしくなかった。今は5月が終わってほしくないと思う。そんな胸を締め付けられるような、切ない思いに駆られている。

5月のマンスリーゲストは今月末をもって活動を終了するラストアイドルの皆さんだ。人気絶頂のラスアイ、誰もが納得できない、理不尽な思いを禁じえない活動終了の知らせだったが、メンバーたちはみな、健気で強かった。愚痴めいたことを口にするメンバーは皆無、最後まで全力で駆け抜けると、顔を上げ、前を向いていた。そんなメンバーたちをみて、ファンも「落ち込んでいる場合ではない、自分にできることは最後までラスアイを応援することだ」と、腹をくくり、立ち上がった。それでも、今回の決定を下したラストアイドル製作委員会にはひと言いいたい。ファンを置き去りにするなと。
さて1回目に来てくれたのは、大森莉緒さん、松本ももなさん、籾山ひめりさんだ。1期生の中でも人気、実力とも申し分ない3人、豪華なメンバーが先陣を切ってくれた。
大森さんといえば、舞台球詠が圧倒的に印象に残っている。ご本人も、最も楽しかった仕事の一番手に球詠を挙げていた。この人には独特のオーラがある。誤解を恐れず言えば、大森さんは令和のアイドルになるために生まれてきたような人だと思う。アイドル像は時代とともに変遷する。昭和の時代、アイドルは手の届かない、神々しい存在だった。平成になり、AKB48がイメージを変えた。会いに行ける、親しみやすい存在になった。そして令和。コロナ禍を経て、アイドルはネット上では会えても、以前ほどは簡単に実物に会えなくなった。でもファンとの距離は決して遠くない。令和時代のアイドルは、いわば昭和的な要素と平成的な要素を併せ持つ、そんな存在になったのではないかと思う。
そこで大森さんだ。舞台の上やライブのステージに立つ大森さんは、神々しいオーラがある。一方で、変顔やってみて、と言われれば、何の躊躇もなくやってみせる。神々しさと親しみやすさを兼ね備えたアイドル、それが大森さんだ。だから令和時代のアイドルというイメージにぴったりくる。そんな大森さん、いずれラスアイのセンターポジションに立つ日がやってくるだろうと思っていた。ステージの最前列、ど真ん中で輝く大森さんを見てみたかった。
松本さんはひと言で言えば、アイドル界の大谷翔平だと思う。のっけから何わけのわからんことを言っているのだと思うかもしれないが、しばしお付き合いいただきたい。
米国メジャーリーグで大活躍している大谷翔平選手は昨年、MVPなど多くの表彰を受けた。その中で彼が一番嬉しかったと言っている賞が、選手が選ぶMVPだった。共に戦った仲間たちから、お前がナンバーワンだと認められた賞は、何よりの勲章だ。
翻って松本さん、この人はアイドルが認めるアイドル、いわばアイドルの中のアイドルと言っていい存在だ。ラスアイの中でも間島和奏さんや、卒業した長月翠さんが、松本ファンであることを隠さないが、話はラスアイ内部に留まらない。 ラジオiNEWSには様々なアイドルグループがやってくる。オンエア前後の雑談で、筆者がラスアイファンであることに話題が及ぶと、「私もラスアイ大好きなんです」というアイドルが少なからずいる。そして推しメンを尋ねると、9割くらいの確率で松本さんなのだ。
アイドルが憧れるアイドル、ここには素人が関与できない、独特の世界観がある。これこそが松本さんの最大の魅力であり、武器になっている。プロが認めるプロ、時には鎬を削るライバルたちが認め、思いを寄せる存在、それが松本さんだ。筆者が松本さんをアイドル業界の大谷翔平と位置づける所以だ。
シュークリームロケッツや&M.LLYですでにセンターを務めているが、松本さんも、このままラスアイが続けば、いずれ表題曲でセンターを取っただろうなと思う。
メンバー最年少の籾山さんも、ただ者ではない。4周年ライブで披露した「To the Top」、ラスアイ史上、最初で最後のソロ曲だ。実際、籾山さんは歌が上手い。声がいい。歌っている時のきりっとした表情がいい。だからこそ、メンバー初のソロを任されたのだろう。4周年ライブの帰路、栗林さんとの会話を思い出した。「ひめりちゃんのソロ、良かったですね」「うん、近い将来、ひめりちゃんがセンターになるんじゃないかな」。
籾山さんには大きな武器がある。ローラースケートだ。デビュー前のオーディションバトルで、籾山さんはローラースケートを披露したが、審査員の評価は厳しかった。歌で勝負すべきで、ここでローラースケートを出すのはいかがなものか的な指摘だった。筆者はたまたま番組をみていて、強い違和感を覚えた。挑戦者だった籾山さんは、歌もダンスも暫定メンバーに引けを取らないレベルにみえた。少なくとも、歌で劣る分をローラースケートでカバーするという図式ではなかった。歌とダンスが互角なら、プラスαの武器であるローラースケートの分、籾山さんが勝ったと思ったのだが、結果は逆だった。
1人のファンとして思う。籾山さん、ローラースケートを絶対に手放してはいけない。これは他のアイドルにはない、あなた独自の武器になるから。ミュージカル「スターライトエクスプレス」のように、ローラースケートがテーマになるような仕事が、どこで舞い込んでくるかわからない。何より楽しそうにローラースケートで、くるくる回転している籾山さんは、掛け値なしに可愛い。舞台球詠2で見せてくれた演技力も大きな可能性を感じさせる。メンバー最年少の籾山さん、伸びしろは無限大だ。
ここまで書いて、改めて思った。ラスアイの活動終了、あまりにもったいない。これから先、どれだけのことができたか、どれだけの夢をファンと共有できたか、本当に惜しまれる。プロダクションのツインプラネットさんに切にお願いする。できるだけ多くのメンバーがアイドル活動を続けられる場を作ってあげてほしい。願わくば、ラスアイのDNAを継承するような、最低でも10人くらいのグループができたら嬉しい。もしそんなグループが誕生したら、ラジオiNEWSはラスアイ同様、応援することを約束する。

(日本経済新聞 編集委員 鈴木亮)

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