2007年1月21日(日) 府中市総合体育
CASCAVEL TOKYO 3(2-0)(1-2)2 ボツワナFCメグロ

■「勝ちにこだわった」カスカヴェウ
第4試合でリーグ優勝はファイルフォックスに決まっていたが、『地域チャンピオンズリーグの出場権』がかかっていた1stステージ首位チームと2位チームによる試合は、興味深い一戦であることに変わりなかった。
立ち上がりから目立ったのは、「勝ち負けにこだわった」と言う甲斐修侍が率いるカスカヴェウの試合巧者ぶりである。「前からプレスに行って高い位置でボールを奪ったとしても、その時にできている裏のスペースというのは彼らの大好物」(甲斐)と分析していたカスカヴェウは、まずハーフウェーラインまで引くことで自分たちの後方のスペースを消した。攻撃するスペースを与えないことで、相手の速攻に対し予防線を張ると、次に彼らは2-2の布陣を敷くボツワナを前後に分断しにかかった。ボールを持った選手に対し金山と稲田が横と縦のパスコースを消しながら、挟み込む。挟み込まれた相手選手は、二人の間にパスを通すが、それはカスカヴェウの罠だった。二人の後ろに控える横江がこのパスをカットし、カウンターを仕掛ける。ボールを奪う位置を明確にし、さらに奪ってからの攻撃では数的有利を活かし、チャンスを作るカスカヴェウ。5分の先制点は、プレスをかけにいった稲田祐介が金川武司からボールを奪い、そのままカウンターからGKとの1対1を決めたものだった。
ボツワナのゴレイロ・内山慶太郎は、「カスカヴェウが切り方や追い込み方をしっかりと統一してきたのを感じましたよね。後ろから見ていて『(ボールを)持たされているな』と感じました

9分にもカスカヴェウは前線でボールを奪い2対1の数的有利からチャンスを作る。この攻撃は一度はボツワナに抑えられるが、相手のクリアボールがこぼれたところに誰よりも早く反応したマルコス本田がダイレクトで蹴り込み、カスカヴェウが2-0とリードを広げた。
この後も同様の展開が続く。ボールを奪った時点で数的有利を作っているカスカヴェウは狙いどおりに速攻を仕掛け、ボツワナにファウルで止めさせた。結果、10分には早くも5つ目のファウルを受ける。するとここから第2PKを与えたくない相手の心理状況を見透かすように、カスカヴェウは攻撃に出た。8分には左サイドの森谷優太から前方の横山哲久にボールがわたり、さらに逆サイドをフリーで駆け上がった狩野新がシュートを放つが枠を外れる。19分にも金山が前方でボールを奪い、ドリブルでディフェンダーをひきつけてから左の稲田へパスを送る。稲田のループシュートはクロスバーに嫌われるが、前半はカスカヴェウペースのまま終わった。
◇1st王者の意地
後半開始直後。最前線で狩野がボールを奪い左の森谷へ展開する。シュートは内山の好守にあうが、試合の流れは変わっていなかった。全日本選手権関東大会のプレデター戦で4-0からの大逆転劇に遭ったカスカヴェウは、前半の理想的な試合運びにも油断は見せなかったのだ。「ああいう経験をしているから集中が切れなかったし、まだ2点差だったから」と横江怜が言い、「チャンピオンズリーグがかかっていたし、みんなも前半が良くて、後半は落ちてしまった試合が多かったことを意識していたと思う」と横山哲久が同調する。25分には稲田が相手のパスをカットし、前方の金山、さらに逆サイドでフリーとなった横江へボールがわたり、待望の追加点が入る。
このままでは終われないボツワナも終盤に猛攻を見せる。そして35分に右サイドに流れた神尾佳祐が、後方からのパスにうまくあわせて、鮮やかなシュートでゴールネットを揺らす。それまで単発的に訪れるピンチにも「前半を失点0で折り返していたので、後半も1分間の無失点を20回繰り返すんだと考えた」ことで集中を切らさずに守っていた古庄亨に、「コースは切れていたと思ったし、ポストに当たった音が聞こえたので外れたと思ったんですが…。本当に5センチくらいのポジションミスをとおされたと思う。神様シュートでしたよね」と脱帽させる一撃だった。さらに、38分にも太見が第2PKを決め、1点差まで追い上げる。終了間際にも、太見が横山のマークを外し、飛び出してきた古庄の横を抜けるシュートを放ったが、ゴールマウスに戻っていた横山が、間一髪でクリアーする。「(太見をフリーにしてしまい)『ヤベェ』と思いましたね。亨(古庄)が前に出たから、とにかく残っていたシュートコースを消そうと思って、あのポジションにいたんです」と横山は振り返る。
結果的に、このピンチを乗り切ったカスカヴェウが3位となり、地域チャンピオンズリーグの出場権を獲得した。
◇安堵の理由
「勝つことの難しさを改めて感じた」と言う甲斐を筆頭に、カスカヴェウの選手達には『喜び』よりも『安堵』の気持ちの方が大きかったのだろう。今季加入した横江も、「最低ラインの結果は残せたかなと思います。去年は優勝したのに、今年は優勝できなかったというのは個人的にも大きな課題だと思っています」と冷静だった。「勝ったのに、そんなに嬉しそうじゃないね」と言うと、ようやく「そんなことないですよ。ホッとしたし、嬉しかったですよ。今日リーグ戦が終わって、試合後に初めて一年間を振り返ってみて、今までのフットサル人生で一番濃い1年だったと思うし、すごくプラスになった」と笑った。だが、それも一瞬だった。
「もう一つの大会、地域チャンピオンズリーグという舞台を戦えることになったので、『カスカヴェウ』というチーム名で戦える、最後の大会になりますから、その残された一つのタイトルを全力を出し切って、タイトルを取りに行きたい」

『常勝軍団』と言われるチームが、この試合で得た『安堵』。それは3位になったことに対するものではなく、全日本選手権に出れないチームが、有終の美を飾るチャンスを得たという『安堵』なのだろう。
点差以上の差を感じた試合後、30分以上も神妙な面持ちでミーティングをする彼らの姿を見て、その差に少しだけ触れたような気がした。
Report by 河合 拓
Photo by KENZABURO MATSUOKA

優勝はファイルフォックス!
